元東大院生、不登校を語る〜箱の外で考えて〜

小学生の頃から筋金入りの不登校だった元東大院生が不登校に関する考え方や体験を綴ります。

5. 7年の不登校期間を経て勉強を再開した時の考え

はじめましての方もそうでない方もおはこんばんちは(おはようございます。こんばんは。こんにちは。)。箱の外の中の人です。

 

今回は、7年間の不登校をやめた、つまり学校に再び通うようになったきっかけについてお話ししたいと思います。

 

目次

 

最初におことわりしておきますが、不登校になるのもまた、不登校をやめるのも、きっかけなんて人それぞれだと思います。

 

(毎回言っているように)こういうケースもあるんだよというくらいの気持ちで書いています。

 

あまり不登校について語る人も多くないので、そういうくだらないきっかけもあるのね、こんなくだらないきっかけでもまた学校行くようになるのね、くらいに認識してもらえればと思います。

 

その上で、こういうくだらない取るに足らないようなきっかけでも、本人にとってはとても大切な意味を持つ可能性があるんだと感じていただけたら最高です。

 

だから、

  • 不登校の子には広くいろんな物事を知ったり経験してほしい
  • 不登校の子の周りの人には、そういう機会を是非その子に与えてほしい、あるいは奪ったりしないでほしい

と切に願います。

 

不登校のきっかけ

不登校時代に家で何をしていたかというと、ゲームもそうですが、だんだんと音楽を聴くことにハマっていきました。そしてこれが間接的に不登校をやめるきっかけになっていきます。

 

わたしには歳の離れたきょうだいがいて、小学生5年生の時にビートルズのアルバムを貰って聴き始めました。

 

しばらくはそれをずっと聴いていましたが、中学生になってしばらくしたくらいからだったでしょうか、自分で聴くものを探すようになりました。

 

今振り返ってみると、この頃から少しずつ自分で何かを能動的に始められるようになっていたのかもしれません。

 

何を聴いていいかわからないから、聴いたことがありそうな曲が入っているコンピレーションアルバムを借りてきて、良さそうなアーティストを探していました。

 

この記事を書くに当たって当時聴いていたアルバムが何だったのか(記憶を頼りにググって)探してみました。

 

すぐ出てきました笑

 

これと

music of the millennium

music of the millennium

 

 

 

 これです。 

ミュージック・オブ・ザ・ミレニアム 2001

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別に「これを聴くと学校に行く気になる」とかではないので、その点は誤解なきようよろしくお願いしたいところです。(←無駄な心配)

 

ここから気に入った曲のアーティストのアルバムを借りてきて、ライナーノーツや歌詞を読んで勉強していました。

 

勉強熱心でしょう?

 

何せ暇ですからね!笑

 

歌詞を読んで、何で戦争はなくならないのかとか考えちゃうわけです。

 

何せ暇ですから!!

 

スクールの語源がスコレーであることは有名ですが、本当に暇だと色んなこと考えちゃうんですよね。暇だったのは学校に行ってなかったからっていうのは皮肉といえば皮肉ですが。

 

今からこの時期を振り返ると、以前も紹介した『不登校でも子は育つ』という本で紹介されている、不登校の5つの段階のうち、3つ目の「始動期」に再度入りつつあった時期なんだろうと思います。

(同書でも言われていますが、5つの段階は一直線に進むものではなく、行きつ戻りつします。)

 

安定期には、「家では安定して穏やかに好きなことをして過ごせる」ようになると言われていますが、まさにそうでした。

 

不登校でも子は育つ ~母親たち10年の証明~

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憧れを持つこと

そんなこんなで、色々と音楽を漁っていた当時、すごく気になった曲がありました。それは英国のロックバンドOasisのWonderwallという曲でした。

 

Wonderwall

Wonderwall

  • オアシス
  • ロック
  • ¥200

 

好きだという言葉ではうまく捉えきれないのですが、強い存在感のようなものを感じる曲があったのです。目が離せないという時の感覚です。曲なので見るわけではないのですけれども。

 

誰も自分とは同じように感じていないんじゃないか、何となくそういう寂しさみたいなものが響きました。

 

そこからOasisにハマって、アルバムのライナーノーツだけでは飽き足らず、雑誌の記事なんかを読み漁ったりしていくのですが、彼らのエピソードや曲を知れば知るほど、このバンド中心メンバーのギャラガー兄弟の生い立ちとお兄ちゃんのノエル・ギャラガーが書く歌詞に奮い立たされて、このままじゃダメだと、このまま何もしないで歳食って腐ってくなんてダメだと、そう思うようになりました。

 

 

ギャラガー兄弟は、イングランドの労働者階級に生まれ、家庭は貧しかったといいます。兄のノエルは、幼い頃、アルコール依存症の父親から暴力を振るわれ、その恐怖から吃音症を発症したと言われています。

 

学校に関して言えば、彼は無断欠席するわ、万引きで補導されるわといわゆる問題児でした。

 

13歳の時に、彼は万引きが原因で学校から謹慎をくらいます。謹慎中、家で手持ち無沙汰にしていたところ、物置で父親の古いギターを見付け、時間潰しにいじってたらだんだんと面白くなってきたのだと語っています。

 

当時、私も13-4歳で、まさに同じくらいの年齢でしたし、理由は違えど同じく学校にも行っていなかったので、ノエルがギターに出会ってその後の人生を変えたように、自分も人生変えるなら今なんじゃないか。まだ人生変えられるんじゃないか。そう思いました。

 

単純ですよね笑

 

我ながら書いていて恥ずかしくなります。

 

でも、今思うに、これくらいの単純さや、思い込みの強さとでもいうのは、時に武器になるもののように思えます。

 

ただし、ミュージシャンになろうとするほど夢見みがちではありませんでした。

(ギターは買いましたけどねw)

 

ただ、何かに憧れて、それに近づこうとしたり、それに刺激を受けて何か自分なりにはじめるというのが、不登校で何もすることがない子たちが動き出すために、1つの重要なきっかけになりうるのかなと思います。

 

いま、ここからできること

私の場合、自分がいま、ここにいること*1を前提に、将来のために何ができるのかを考えました。

 

ただ、なりたいものや、やりたいことは全くありませんでした。

 

子供の頃から夢を見るタイプではなく、現実的な考え方をする方だったと思います。

 

なので、とりあえず勉強をしました。

 

勉強は何の役に立つかわからないけれども、何の役に立つかわらかないからこそ、自分が進みたい道ができた時に、その道に進む可能性を閉ざさないでおくことができると考えたからです。

 

高校に行けば、大学に進む道がキープされる。大学に行けば、やりたい仕事が見つかるかは別として、色んな仕事へ就く可能性は広くキープしたままにしておける。

 

特殊な教育、資格や免許を要する仕事には就けなくなるとしても、それよりも幅広い可能性をキープしておくことが私にとっては重要でした。

 

当時は使いもしなかった大人の言葉で言えば、「潰しがきく」ということです。

 

大卒検定を取る道もありますが、時間が少し余計にかかるのと、高校に入学した後でもその選択肢は取れますので、とりあえずは高校に行こうと思いました。

 

私にとって、勉強は、夢や目標達成のための直接的な手段ではなく、後で手遅れだったと気づいて後悔しないための、保険でした。リスクヘッジと言ってもいいでしょう。

 

人間は、生まれたばかりの赤ちゃんのころが一番可能性が残されています。

 

そして、歳をとるに連れて、何もしないでいると、だんだんと可能だったものが、不可能なものに変わっていきます。悲しいですね。。だから若さって素晴らしいんですね。。しみじみ。。(可能性を実現するには、歳をとる必要があるので、歳をとることも良いもの思いますが。そのためには日々頑張らねば…(自戒))

 

ある時点で、あるレベルの能力を身につけておくこと、あるいはある特定の資格や認定を受けるためには、遅れていても巻き返しが可能な一定の期間の後、取り返しのつかなくなる時点がいつか来ます。これは、勉強に限らず、肉体的な能力でもそうです。

 

可能性を可能なままに保つことの重要さに気づいたことが、勉強を再開したきっかけでした。

 

ここから、高校受験を目標として、独学を始めました。

 

中学時代は出席なんてほとんどしていませんでしたから、内申点もほぼ期待できず、学力一本で勝負するしかありません。

 

中学2年の12月のことです。

 

受験まで1年ちょっとしかありません。

 

もはや背水の陣です。

 

ですが、お尻に火がついた状態ゆえに頑張りました。

 

前回、前々回に紹介した、例の5段階でいえば、この頃が私にとっての「活動期」に入った頃だと思います。

 (何の話かわからない方はこちらから↓) 

hakonsoto.hatenablog.com

 

そこからはとても頑張りました。

 

なにせ、小学校低学年からほとんど勉強していませんでしたから、少なく見積もっても7年分の遅れを1年で取り戻さないといけませんでした。

 

でも何とかなるものです。

 

高校入試では科目によっては自己採点では満点を取れたものもありましたし、高校1年の最初の定期テストでは学年3位で、その後、高校で初めての模試では偏差値が高すぎて、担任先生に呼び出されました笑

 

不登校の時の勉強の仕方についてはまた追い追い書いていきたいと思います。

 

活動を始めるまでに、時間もかかりましたが、学校に行かないことで、経験できないこともあると同時に、学校に行かないことでゆっくり考えられることもありました。

 

「なんで、学校なんか行かなきゃいけないんだろう。」

「なんで、勉強しなきゃいけないんだろう。」

「別に、学校なんか行かなくても、生きていけるでしょ。」などなどです。

 

自分なりの答えの一部は、上にも書きましたが、こういうことをゆっくり考えられたことが、その後、勉強をしていく上でとても役に立ちました。目的を持って、納得して、主体的に勉強することができました。

 

先生から押し付けられてする勉強とは全く違いました。

 

一度自分で納得して、目標も定めて、自分より優れた憧れの存在から刺激を(勝手に)受けつつ、自分の意思で学ぶというのは、その後、大学生、大学院生、社会人のいずれの時にも重要な姿勢だったなと思います。

 

この姿勢は間違いなく不登校の経験から培われたものだと断言できます。

 

ですから、不登校になったとしても、そこから得られる経験や能力をその後の人生に生かしてほしいなと、今不登校の子どもたちに伝えたいとおもっています。(なので、このブログを積極的にシェアしたり、当事者・関係者へ紹介いただけるととても嬉しいです!)

 

今回はつい長くなってしまいました。

 

私がどういう風に勉強をし始めたか、どうやって勉強の遅れを取り戻していったか、これにどういうメリットがあったかなどについては、また別の機会に書くことにししたいと思います。

 

蛇足

 私がすっかりoasisに心酔している頃、彼ら初のベストアルバムが発売され、その企画として、ウェブサイトに「ノエルのつぶやき」なるものが毎日1つずつアップされていました。いまでも好きな言葉なので、過去を振り返ったついでに、ここに書いておきたいと思います。

 

「善良で他人に好かれる人間である限り、人生捨てたものじゃない。おれは『いつか何かいいことがきっとある』ってずーっと信じてた」 

「オレは生きていることが大好きだ。日々の生活を毎日楽しんでいる。そんな中からオレの曲は生まれてくるんだ」

 

本人は騒動ばかり起こしていて、とても一般的に“善良”とはみなされないような人ですが。まあ、世界中から好かれていたこと、人生を楽しんでいたは事実でしょう。

 

僕も、人生をより楽しむことができるように、知識を深めたり、良いものに出会うことが今後の目標です。

 

 

*1:Oasisの3rdアルバムのタイトルがBe Here Nowです。