元東大院生、不登校を語る〜箱の外で考えて〜

小学生の頃から筋金入りの不登校だった元東大院生が不登校に関する考え方や体験を綴ります。

6. 不登校に関する文科省の最新調査結果をまとめてみた

 

今回は、不登校の現状を把握しておくために、文部科学省の2つの調査の結果を少し詳しく見ておきたいと思います。最新と言っても、不登校だった子への追跡調査の方は5年近く前に公表されたものですが(不登校だった時期にいたっては12年も前。干支が一周してる…)。

 

 

最初にことわっておきます。

文字ばっかりですみません。。。

 

問題行動・不登校等調査

このブログの最初の投稿でも書きましたが、2017年度は不登校の小中生が過去最多の14万4千人になったということが文部科学省の調査でわかりました(現時点でわかる最新の調査結果)。

平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省)

 

この調査は、全国の不登校の生徒児童の数や、全体に占める割合が良くわかります。

ざっとイメージの掴みやすそうな情報をピックアップすると以下の通りです。

 

【小学校】

  • 2017年度に不登校だった小学生は3万5032人(子供は減っているのに過去最高)
  • 初めて3万人を突破した2016年度からさらに15.1%増(二桁増加は2年連続
  • 全児童数に占める割合も0.54%と過去最高を更新(初めて200人に1人を切る)

 

【中学校】

  • 2017年度に不登校だった中学生は10万8999人(なお、過去最高は2001年度の11万2,211人)
  • 前年度比は5.6%と2年連続で5%近傍を記録(2016年度は4.9%)
  • 全生徒数に占める割合は3.25%と過去最高を更新(約30人に1人の割合)

 

このように小学校、中学校ともに過去最多の不登校生の割合を記録しました(推移とかについてより詳しく知りたい場合は、実際に報告書を見てくださいね)。

 

文部科学省における不登校の定義は、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」です。

 

心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景って、それもう全部じゃん!笑

 

それ以外ないじゃん!笑

 

というツッコミは置いておくとして、つまり、病気で学校に行けないとか、お家が貧しくて学校に行けないといった理由ではないけれども、1年に30日以上休んだ場合、だいたい不登校であると言ってよいということになります。

 

なお、不登校の定義をどうするかという議論や不登校の歴史については、以下の本がとてもよくまとめていて、今を考える上でも非常に勉強になります。

(昔は学校に行かない子どもばかりで、学校になんか行かせても何にもならないと考えて、学校に行かせない親も多かった等々)

 

 

文部科学省の調査における不登校の定義に沿って話をするならば、私もこの定義にばっちり該当する不登校を経験しました。

前にも書いた通り小学校3年ごろから中学校3年生まで、実に7年以上不登校でした。

小学校1・2年生の時も、もしかしたら年間30日以上休んでいたかもしれないので、不登校に該当しているかもしれません。

 

多くの読者の方(読者自体が多くないかもしれませんが)は、こうした調査結果をみて、

不登校の子が増えるなんて、けしからん。学校に行かせろ」

「学校に行けないなんてかわいそう。不登校は減らして、解決してあげるべきだ」

「政府や学校はもっとしっかりと対策を講じるべきだ」

などと思われるかもしれません。

 

あるいは、当事者として、またはその家族として、そのほかにも色々と思うところがあるかもしれません。

 

例えば、この調査結果を見た不登校の人は、ある意味で仲間がたくさんいるように感じられて安心したり、自分以外にも不登校で悩んでいる子がたくさんいるのだと驚いたりするかもしれません。

 

皆さんはどう思いますか?

 

ちなみに、ずっとフリースクールとかに通って出席扱いになっている子はここにはカウントされていないはずです。なので、学校に通っていない子の人数はもっと多かなるはずです。

 

不登校生徒に関する追跡調査 

さて、全体の状況がなんとなくわかったところで、次は不登校になった子たちが、どういう思いを抱いていたかなどについて調べたものを見てみましょう。

文部科学省は、今後の不登校生徒への支援策の参考とするため、平成18年度に不登校だった生徒の5年後の状況などについて追跡調査を行っています(平成23年度より調査研究会を設けて調査・分析を実施)。

なお、平成13年にも、当時の文部省において、平成5年度の不登校生徒への追跡調査を実施しており、平成23年度の調査と一部比較できるようになっています。

「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~:文部科学省 (平成26年7月公表) 

 

この調査は、過去に不登校であった者のうち、「平成18年度に中学校第3学年に在籍し、学校基本調査において不登校として計上された者」(41,043人)を対象としています。

要するに、当時中3で不登校だったやつら全員調べてやるぜ!、というかなり大規模な調査です。

以下では、調査対象者本人に対して、①中学校在籍当時、②中学校卒業後、③現在の状況などについて、実施したアンケート調査についてみていきます。(実施期間:平成24年1月~3月、回答数:1,604人)

 

学校を休みはじめたきっかけ

学校を休みはじめたきっかけについては、友達、先輩、先生といった学校における人間関係の比率の高さが目立ちます(複数回答可)。

  • 「友人との関係」  52.9%、 
  • 「生活リズムの乱れ」 34.2%、
  • 「勉強が分からない」31.2%、
  • 「先生との関係」26.2%、
  • 「クラブや部活動の友人・先輩との関係」22.8%。

家庭環境の問題に関する項目では、「親との関係」14.2%が最も高く、「家族の不和」10.0%と続いていますが、「学校生活をめぐる問題と比べると相対的に低い比率であり、家庭生活での問題よりも学校生活をめぐる問題がより不登校になるきっかけとなっている」ことが指摘されています(まあ、そうだよねって感じ)。

 

不登校の継続理由

不登校を続ける理由としては、「無気力でなんとなく」や「ぼんやりとした不安」など、曖昧なものの割合が高いと言えます。

  • 「無気力でなんとなく学校へ行かなかったため」43.6%、
  • 学校へ行こうという気持ちはあるが、身体の調子が悪いと感じたり、ぼんやりとした不安があったりしたため」42.9%、
  • 「いやがらせやいじめをする生徒の存在や、友人との人間関係のため」40.6%
  • 「朝起きられないなど生活リズムが乱れていたため」33.5%、
  • 「勉強についていけなかったため」26.9%、
  • 「学校へ行かないことをあまり悪く思わなかったため」25.1%

私もおそらくこのなんとなく分類に入るなのですが、裏返しとして、学校に行く理由がはっきりしないということもあるのだろうと思います。

行かなければならない理由がはっきりしていれば、行かない理由もはっきりするはずだからです。

もちろん、最初ははっきりとした理由があったのかもしれませんが、休みが長くなるにつれて、その理由もだんだんとぼやけてくるのかもしれません。

 

あとは、学校へ行かないことを悪く思わなかったためという理由(25.1%)が意外と多いように思います。回答者の約4人に1人はそう思っているのですから。

学校には行かなければならないものという規範的な信念のようなもの、しばしば、学校の聖性(これについては、先に挙げた滝川氏の『学校へ行く意味、休む意味』をご参照)とも呼ばれるものが、弱まっているのではないかなという印象を受けます。

この規範的な信念が社会で薄れてしまうと、学校に通う児童生徒が少なくなってしまって、一定水準の教育をほぼすべての教育対象年齢の子供たちに施すという義務教育の働きが弱まる可能性があります。

しかし、「なんで学校なんかに通う必要があるんだ」と考える子どもたちがいるのは、ある意味健全で好ましいことだと個人的には思います。

大人はその疑問を共に真剣に考えてあげる必要があると思います。大事なのは、本人が納得するまで、その問いについて考え続けることです。答えがどうであるかはそれに比べたら大して重要ではありません。 

 

中学校3年生時に学校を休んでいたときの気持ち

中学3年性の時に、学校を休んでいた時の気持ちとしては次のような結果が出ています(「そう思う」および「少しそう思う」の合計)。

  • 「自分自身は悪いこととは思わなかったが、他人の見方が気になった」60.8%、
  • 「学校へ行きたかったが、行けなかった」58.8%
  • 「特に問題を感じたり、気にしたりすることはなかった」 50.5%

ここでも、問題を感じたり気にしたりしていない回答割合が高いように思われます。

ただし、問題は感じていないけれども、本当は学校に行きたかった子もいるでしょうし、また、学校に行かないことを自分自身が気にしていなくとも、周りの見方を気にしている割合は約6割と非常に高いと言っていいと思います。

 

続けやすい勉強方法

中学校3年生時の学校以外の方法によって学習を続けたいと「思っていた」と回答した者に、勉強が続けやすいのはどのような方法かを尋ねた質問の回答は以下のようになっています。

  • 「教育支援センター(適応指導教室)に通う」33.3%、
  • 「郵便、FAX、電子メール、インターネット、電話などを用いて助言してもらいながら家庭で勉強する」30.3%
  • 「民間教育施設・機関」(フリースクールを除く進学塾、 補習塾、 サポート校など)27.5%、
  • 「民間施設 」(フリースクールなど)26.6%

 回答の比率がばらけていることからも、多様な学び方を許容、提供することが望ましいと考えられないでしょうか。

 

勉強を続けたくない理由

「中学校3年生時の学校以外の方法による学習ニーズについて学習を続けたいと「思っていなかった」と回答した人に、その理由を尋ねた質問の回答は以下のようになっています。

 

  • 「何もやる気がしないから」32.4%
  • 「勉強がきらいだから」29.1%
  • 「学校以外で勉強を続けるくらいなら学校へ行くから」18.0%
  • 「勉強に意味があるとは思えないから」14.0%
  • 「勉強以外にやりたいことがあるから」11.0%
  • 「その他」9.5%

 

「何もやる気がしないから」、「勉強が嫌いだから」が上位となっているのは、報告書によれば、前回調査と同様とのことです。 しかしながら、「何もやる気がしないから」については前回の22.2%から32.4%へと約10.0%増加しています。

一方で「勉強以外にやりたいことがあるから」は16.0%から11.0%へと5.0%減少しています。この傾向について、報告書では「無気力傾向の増加に留意する必要がある。」と指摘しています。

全くその通りで、若い時間を無為に過ごすことは避けてほしいと切に願います。学校に行かなくても、何か自分が惹かれるものに自分なりに取り組めることができればよいのですが。

 

不登校経験に対する評価

不登校経験に対する評価に関する回答を見ていくことにしましょう。

不登校であったことに対して、「行けばよかった」という後悔の念を持っている人が最も多く、37.8%となっています。

次いで多いのが、「しかたがなかった」と回答している人で、 30.8%です。なんというか、胸の詰まるような回答です。。

 

気になるのは、「行かなくてよかった」とする不登校への肯定的な回答は 11.4%と、他に比べて、やはり少数であることです。

前回の調査と比較した場合、「不登校への肯定的な回答を行っている者の比率が 27.7%から 11.4%と 16.3%減少している」との記載もあります。

 

ただし、今回調査では、「何とも思わない」という選択肢が新たに設定されており、本調査の「行かなくてよかった」と「何とも思わない」という回答を合わせた比率は 28.4%になっています。報告書でもこの数字について、「前回調査の 27.7%と比較して大きな差が生じていない。 よって、 本調査結果をもって、不登校に対する肯定的な評価が減少したとは考えられない。」との見解を述べています。

ただし、不登校が良かったと思えている不登校経験者が少ないのは、残念なことです。この結果を見てすぐに、「やはり学校に通えるようにするべき」といった答えに飛びつくのではなく不登校になったとしてもそれをポジティブな経験にすることができないか考える必要があると思います。

 

他方、不登校であったことをマイナスと感じている者は 23.5%で、 マイナスとは感じていない者 40.3%よりも少ないという結果も出ています。しかし、やはり、プラスに感じている者よりも倍以上多いことになります。

 

進路選択の状況

中学校卒業時点の「就学」は 65.3%から85.1%と約 20%増加しており、不登校生徒の高校進学率は確実に向上しています。

ただし、2007年3月の中学校卒業者の高等学校等進学率は 97.7%、 専修学校 (高等課程) 進学率は 0.3%、 合計で 98.0%であることを踏まえると、不登校だったった生徒の高校等進学率は低いと言えます。

 報告書では、前回調査と比較して特筆できることとして、「現在何らかの学校に就学していると回答した者が 23.0%から 46.7%と大幅に増加していること」であると述べています。とりわけ、「大学」については、6.6%から 19.0%と約3倍に増加しているそうです。

大学に行くことが必ずしも素晴らしいこととは限りませんが、進路の可能性が狭まらないようになってきていると理解できるとすれば、それは望ましいことだと思います。