7. 不登校に関する最近の政府の取組みについて調べてみた
どうもです。閲覧ありがとうございます。箱の外の中の人です。
たまに、「箱の中の外の人」と書きそうになります。それじゃ普通に箱の外じゃんね。
さて、本日は、不登校に関する最近の政府の取り組み状況について、調べて書いていきたいと思います。一言でいうと、良い方向へ舵が切られていると思います。
ですが、実現は前途多難な気がします。特に、学校の現場は大変だろうなと。
でも、目指す方向としては、いい変化が起きていると思っています。
教育機会確保法
このブログの初回の記事にも書きましたが、2017年に「教育機会確保法」というものが施行されました。
この法律の目的は、「不登校児童生徒に対する教育機会の確保、夜間等において授業を行う学校における就学機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等を総合的に推進」するとことされています。
要するに、普通の学校に通っている子たち以外にもちゃんと教育を受けられる機会を作ってやらないとダメですよ、ということが法律で言われたわけです。
また、この法律の基本理念として次のようなものが掲げられています(一部抜粋)*1。
- 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること
- 不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備が図られるようにすること。
つまり、学校に通っていない子どもたちが、いろいろなかたちで学習をしていることを踏まえて、それぞれの場合に応じて必要な支援をしなさい、学校に通っていない子どもも落ち着いて教育が受けられる環境を整えなさいということです。
また、文部科学省から、法律の公布に際して関係者に出された通知にも記載されていますが、衆議院文部科学委員会および参議院文教科学委員会において、次のようなどの附帯決議がなされています。
- 不登校の児童生徒やその保護者を追い詰めることのないよう配慮するとともに、児童生徒の意思を十分に尊重して支援が行われるよう配慮すること
- 不登校は学校生活その他の様々な要因によって生じるものであり、どの児童生徒にも起こり得るものであるとの視点に立って、不登校が当該児童生徒に起因するものと一般に受け取られないよう、また、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮すること
- 例えば、いじめから身を守るために一定期間休むことを認めるなど、児童生徒の状況に応じた支援を行うこと
附帯決議というのは、法律案を成立させるときに、その検討をしている人たち(委員会)の意思を表明するものですから、こういう思いや意図で作られた法律だということがわかります。
ただでさえ業務がいっぱいいっぱいで、過酷な長時間労働を強いられている学校の現場がそれを実現できるかというと、はなはだ疑問ですが、目指すべき方向性としてのこうした基本理念や意図は不登校児童生徒にとって大変素晴らしいものだと思います。
付帯決議にも「多様な児童生徒を包摂し共生することのできる学校環境の実現を図ること。また、その学校環境の実現のために、教職員が児童生徒と向き合う時間を十分に確保できるよう、必要な措置を講ずること。」とありますが、学校にそんな余裕があるのでしょうか。
後々書く予定ですが、学校はそもそも多様性(みんなそれぞれ違う)よりも一般性(みんな一緒)を志向している組織ですから、「多様な児童生徒を包摂し共生すること」を実現するするには、今の仕組みや態勢をかなりドラスティックに変える必要があるでしょう。
もし包摂と共生というのが、多様な児童生徒を教室にとりあえず押し込んでおくだけということでないのであれば。
また、不登校の状態にある本人や家族などの関係者を取り巻く世間が、不登校に対する理解を示すようになるかというと、これもわかりません。
不登校に関する調査研究協力者会議
「教育機会確保法」が作られるにあたって重要な基礎になっているのが、文科省に設置された「不登校に関する調査研究協力者会議」の最終報告書です。
同会議の最終報告書は「不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~」と題され、2016年7月29日に公表されています。
そこでは次のような見解が記されています。
「不登校とは、多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断してはいけない。不登校の児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、 「行きたくても行けない」現状に苦しむ児童生徒とその家族に対して、「なぜ行けなくなったのか」といった原因や「どうしたら行けるか」といった方法のみを論ずるだけではなく、学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが、児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要である。」
不登校とは不登校状態になっていることだという堂々巡りの定義についてツッコミを入れるのはやめておくとしても、不登校を「問題行動」と判断してはならないなど、不登校に関するこれまでの見方を改める内容になっています。
なお、この報告書を受けて文科省から出されている「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」では、「不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方」として次のような記載があります。
不登校児童生徒への支援は、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また、児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。
登校は目標ではあるものの、他の目標、すなわち社会的に自立すること等を考慮したうえでの1つの目標に過ぎないこと、不登校に児童生徒によってはプラスの意味があることを認めています。
ただし一方では、目標である社会的に自立することに対する悪影響の可能性、勉強についていけなくなることなどの弊害の可能性があることを忘れてはならないと注意を促しています。
これは、不登校に対する譲歩、あるいは理解の深まりとして一定の評価ができると思います。
教育の機会確保に関する基本指針
また、文科省は教育機会確保法に則って、2017年3月末に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」を策定、公表しました。
先ほどの通知とも重複する部分もありますが、重要と思われる箇所を引用します。
不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮し、児童生徒の最善の利益を最優先に支援を行うことが重要である。
不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われることが求められるが、支援に際しては、登校という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある。なお、これらの支援は、不登校児童生徒の意思を十分に尊重しつつ行うこととし、当該児童生徒や保護者を追い詰めることのないよう配慮しなければならない。
個人的には、「不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮」、「登校という結果のみを目標にするのではなく…社会的に自立することを目指す必要がある」という部分に我が意を得たりという心境です。
また、よくブログ記事でも見かけますが、学校からの働きかけが、子どもや保護者にとって負担になっているケースも多いようです。私の場合も、先生の訪問は精神的に重荷でした。
支援というのは、支援される側が求めるものでなければ支援たりえず、独りよがりになってしまいます。再び登校させたいという学校側や親の理屈だけでは、支援はできません。
長くなったので、政府取組みに関する疑問点やツッコミについてはまた次回。