9. 不登校中のIT利用学習による出席扱いの制度設計に物申す
どーも。箱の外の中の人でやんす。
ちょっと日が空きましたが、前回の記事の続きで、不登校の子たちのIT学習支援に関する文科省へのツッコミです。ちょっと読みにくくなっちゃいました。すみません。でも色々参照しないと問題ってしっかり見えてこないんです。
もくじだよ
IT 等を活用した学習活動を行った場合の積極的な対応?
さて、前回とりあげた文科省の文書に関連して、文科省から最近出された事務連絡である「不登校児童生徒が自宅において IT 等を活用した学習活動を行った場合の積極的な対応について」(平成30年10月1日)には、以下のような記載があります。
平成 28 年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」における「自宅におけるIT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数 (国公私立合計)」の集計を見ると、指導要録上出席扱いの措置がとられている児童生徒数は小学校で 16 人、中学校で 142 人にとどまっております。
ナニコレめっちゃ少ないやん…笑
という予想以上の利用数の少なさです。不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いの通知が出てから10年以上も経っているというのに!
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/06041201.htm
この28年度に、小学校では3万448人、中学校では10万3,235人が不登校だったとあるので、それぞれ、0.0525%(不登校の子2,000人に1人くらい)、0.1376%(不登校の子1,000人に1人よりはちょっと多いくらい)しかこの制度を利用できてないということです。
前に29年度の不登校の統計を調べたときに書きましたが、中学校だと30人に1人くらいが不登校なので、まぁ、クラスに1人不登校の子って感じでしたね。また計算するのめんどくさいので前の記事で許してください笑
クラスに1人不登校の子がいるということは、逆に言えばIT学習などで出席扱いになっている子は1000クラスに1人だけです!
クラス担任がIT学習で出席扱いにするか決めるのだとすれば、1000人に1人の担任の先生しかこの制度を使っていない計算になります。ザックリな計算ですけど、イメージはこんなもんです。
これが続くようなら積極的な対応とは聞いて呆れますよね!
教育機会確保基本法の付帯決議との整合性の問題
前述の事務連絡には他には、次のような記載もあります。
不登校児童生徒の中には、家庭にひきこもりがちであるため、十分な支援が受けられていなかったり、不登校であることによる学習の遅れなどが、中学校卒業後の進路選択の妨げになっていたりする場合があることから、学校や教育委員会が保護者と十分連携・協力しつつ、児童生徒の自宅における学習活動への意欲を引き出し、その結果を学校として適切に評価することをもって、児童生徒の社会的自立に向けた支援を一層推進していくことが重要であると考えます。
これはほぼおっしゃる通りだとは思うのですが、「その結果を学校として適切に評価することをもって」、という部分に関して、前回の記事で見た通り、出席扱いにするための7つの要件のハードルが高すぎるために、これほどまでに使われていない制度になってしまっているのではないかと思います。
また、やはり、この平成30年の事務連絡でも、表現ぶりは異なりますが、平成17年の文書と同じように「学校に登校しないことを認める趣旨ではない」、「不登校状態の悪化につながることのないよう留意すること」というニュアンスが感じられます。
例えば、この部分。
出席扱いと判断した場合に、留意すべき点はありますか。
○ 自宅における IT 等を活用した学習活動を「出席扱い」とすることが、不登校をいたずらに助長しないよう留意する必要があります。家庭にひきこもりがちな期間が長期化しないよう、個々の児童生徒の状況を踏まえつつ学校外の公的機関や民間施設等での相談・指導を受けることができるように段階的に調整していくことも大切だと考えます。
そうであれば文科省のスタンスとしては「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではない」としても、やはり不登校は認められてはいないという微妙なものであると言えそうです。
でも、教育機会確保基本法の成立に当たっての付帯決議には「一定期間休むことを認める」という支援のあり方も記載されていました。これとの整合性はどう考えるのでしょうか。
この付帯決議について気になる方は以下の記事をご覧ください。
いずれにせよ、ITの進歩の著しいこの時代において、IT 等を活用した学習活動は推進していくべきだと思います。不登校であってもなくても。
出席で評価するの、やめませんか
ここまでいっておいてちゃぶ台返しをするようで申し訳ないのですが、IT 等を活用した学習活動に限らず、そもそも出席扱いにしてもらう必要ってそこまで大きいのでしょうか。
いや、この問い方は正確ではないですね。内申点とかに響くから出席扱いにしてもらうことは大事だというのは理解できますから。
問い方を変えましょう。
そもそも、出席していることだけでプラスの評価をされるというのは、おかしいと思いませんか?
大学の授業でもそうですが、寝てても出席になるんですから。
例の煩雑な出席要件は手段と目的が逆なんですよね。出席するのは学習するためなので、学習してたら出席扱いにするなんてのは意味がなくて、学習してることがわかったのなら、それを評価すればいいんです。学習して身についた内容を把握できるのであれば、出席してるかどうかなんて評価の上でなんの意味もない。
皮肉を言うのを許してもらえるなら「学校が把握した当該学習の計画や内容がその学校の教育課程に照らし適切と判断される」ならプラス評価するようにしましょうよ。これだけなら出席の有無は関係ありませんから。
出席しただけでもプラスの評価がされるという現状のあり方が改められれば、自宅における IT 等を活用した学習活動を「出席扱い」とすることで不登校がいたずらに助長されるということもなくなると思うのですが、どうでしょうか。だって、出席扱いになっても何もいいことがないから。行っても行かなくてもそれ自体では評価は変わらないんだから。
そんなことしたら、不登校じゃない他のみんなまで学校に行かなくなるじゃないか!という批判があり得るかもしれませんが、そうだとすれば、それは学校が人を引きつける価値がないと認めることと同義です。
出席が評価されなくても、学校に行く価値があるとみんなから思われるような教育が提供される必要があります。
じゃあ、どういうスタイルの学校が望ましいと思ってるんだ!対案を示せ!と言われるかもしれませんが、それを述べるには、一旦教育とはそもそもどういうものなのかを考える必要があります。
それはまた後日。
おまけ: “学校に行かない”キャンペーンは実現するのか?
なお、2017年8月27日に、教育イベント『未来の先生展2017』で、前川喜平元文科事務次官が「学校に行きたくない子を学校に来させちゃダメです」と発言したり、8月20日にも「夏休み明けが本当に危ない。“学校に行かない”キャンペーンをしたいぐらい」だと講演会で語ったりしていると報道されています。
しかし、前述のような文科省の微妙なスタンスをみるに、政府が不登校を認める一環として、“学校に行かない”キャンペーンが実現するのはまだまだ先のことかもしれません。